鈍感な人が好き

「チホ、帰るなよ。帰らないでくれよ…」

DVDレンタル店で働く男トム兄と、五歳年下の愛嬌たっぷりなフリーター・チホ。映画談義と深夜の雑談を重ねる穏やかな日々の裏で、すれ違い続ける想いが静かに膨らんでいく。告白できない男と、待ち続ける女。酔った夜を境に動き出す、不器用で少し可笑しい恋の行方。

#エモチックコメディ
#鈍感な人が好き
#広ヒロスケ

鈍感な人が好き©︎広ヒロスケ Amazon Kindleストア99円 Kindle Unlimited対応

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 バイト先に五歳年下の女の子がいる。

 チホという名の二十四歳、フリーターだ。小柄で、グラマーで、そして、愛嬌がある。遅刻なし、欠勤なし、日々の仕事もキチンとこなして、たいへん見どころがある。

 何よりも彼女は性格がいい。気さくでおおらかなんだ。大雑把で細かいことを気にしない。俺は女という生物が得意とはいえない。面倒だし、煩わしいし、なんか怖い。そんな俺でも、彼女だと、長く一緒にいても疲れない。本当に助かる。

 チホは俺のことを、トム兄と言って慕ってる。なぜトムなのか?チホが勝手に名付けたニックネームだが、その理由は、俺が、トムとジェリーのトムに似ているから―だそうだ。

「トム?俺が猫に似てるって?どこが?」

「そうね、その長くて変テコなヒゲかな?」

 俺のヒゲは薄い。薄いんだけど、長く伸ばしてるせいか、言われてみれば、そんな感じもする。このヒゲのせいで、昔はネズミ男と言われてたけどな。猫かネズミか、一体どっちなんだよ?

 勤め先は、DVDのレンタルショップだ。

 他にスマホ、ゲーム、漫画とかの買取、中古販売もやってる。動画配信全盛の今、よくも生き残ってるもんだ。店の外見は至って平凡なんだけど、オーナーが、めちゃくちゃマニアックでね。どこを探しても見つけられないような作品を取り揃えてる。仕入れ先は、コンフィデンシャル。オーナー以外は知らない。そりゃ、そうだ。


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