引っ越してきたんだよ。俺の部屋の隣に、可愛い子が。
レンタル店をクビになったツトムの前に現れたのは、仏女優のような妖艶美貌の隣人・ハフリだった。彼女の部屋で「G」を素手で握り潰した瞬間、ツトムの運命が激変する。己の根性を試すため、過酷な特殊清掃の現場へ飛び込む。そんな彼を「運命の人」と呼び、盲目的に愛する小悪魔な彼女。月光に照らされた白い肌と、鍛え上げられた僧帽筋。剥き出しの生と性が交差する…
#エモチックロマンス
#彼女とGと僧帽筋
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彼女とGと僧帽筋
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えーっとね。
引っ越してきたんだよ。俺の部屋の隣に、可愛い子が。めっちゃくちゃ、可愛い子が。
例えていうならな、フランスの女優、ブリジット・バルドーが演じた小悪魔ジュリエットか、吸血鬼よ永遠なれのサラ役、シャロン・テートか、ベビイドールのキャロル・ベーカーか、みたいなさ、そういう、なんていうのかね、妖艶つうか、妖女つうのか。
分かりにくいってか?例えが古すぎたか。レンタル屋のバイトで、古い映画ばっか観てるからだな。
とにかく、俺が言いたいことはさ、つまりそれくらいその娘が、それくらいの、超ド級の美貌だってことさ。
でさ、引越しの挨拶なんて、今どきやりますかね?やらないよね。東京は危険な街だし。アパートだし。たいていはヒッソリとさ。隣人にも気付かれずに、生活するもんだよ。特に、女性なんだし。
でもね、来たんですよ、ピンポーン♪って。
その日、俺は、レンタルDVDのバイトをクビになったばかりで、部屋で寝てたわけよ。
今どき映画やドラマをレンタルしようなんて奴いねーよ。動画配信サービスは、最強すぎるからね。レンタル屋はさ、もう厳しいんだよ。生き残りに必死よ。
バイト先も以前はさ、貸しDVD一本だったけどさ、漫画本も置いて、お菓子の販売とか、中古ゲーム、ガジェットとかも扱うようになってね。でもさ、商売は難しいよ。新しいこと始めてもさ、すぐに結果が出ることなんて、そうそう無いんだよ。今では、あの店も、成人向けコンテンツで、なんとか食いつないでる。
「ツトム、申し訳ないが、来月いっぱいで契約終了だわ」
気の毒だったよね。俺は答えたよ、答えるしか無かったんだよね。
「いや、自分は今日まででもいいッスよ、店長、無理しないでください、俺はどうにでもなりますから」
「ツトム…本当に申し訳ない」
社長はさ、この仕事が好きだった。DVDで映画を観ることが趣味の人でさ。家には、立派な映画鑑賞専用の部屋まで作ってさ。デビッド・フィンチャーっていう監督の作品が好きなんだって。でもさ、店長に勧められて観たその監督の映画はさ、めちゃくちゃ、オモロかったんだよな。ファイトクラブ、地下にある博打喧嘩の話だ。己の根性試しに殴り合う男たち。痺れまくったね、超名作だね、間違いない。
で、店長は、今でも毎日一本、映画を観るらしいけどさ。あの部屋でさ。今、どんな気持ちなのかな、って思うと。気の毒だよ。
ほんと、商売ってのは、難しいよね。
きっとその内、店をたたむことになる。好きな仕事が、奪われちゃう。これはキツイよ。あの歳で。家族もあって。苦しいだろうな。俺は、店長が好きだった。心のある、優しい人だった。でも商売はちょっと下手だったかも知れない。
だからってさ、仕事を失うなんてな。辛すぎる。俺もだけどさ。俺はさ、まあ良いよ、バイトだし、何の責任もない、今日食えさえすれば良い、根無し草なんだしよ。
警備員でも、土方でも、なんでもやるよ。独り身で気楽だし。こう見えても、根性だけはある。ある意味、根性しか取り柄がない。
話が飛んでしまった。
でさ、家で寝てたのよ。Tシャツとパンツ一丁でさ。
俺の部屋が、ピンポンされることってなんだ?年金の催促か、NHKくらいだろ?
払ってないのかって?ちゃんと払ってたよ。
バイトをクビになって、金がなくなったからさ。今ちょっと、待ってもらってるだけ。俺はNHKもさ、観るんだよ。朝ドラとか、NHKスペシャルとか。奴ら、良いコンテンツを持ってるからな。評判は良くないらしいけどね。
だからね、ピンポンされても、出なかったわけ。金がないから。まあ大体、三回もスルーすればさ、帰っていくよね。汚ったねえアパートだしな。帰るよ、二、三分でさ。
そう思って、息をひそめて、三回目のチャイムを待った。
息をひそめたのは、怖いからじゃなくて、相手への礼儀のためだよ。居留守なんだからさ。それなりのマナーってモノがあるでしょうよ、と。
そんな気持ちがあるなら、出ろよってか?そりゃそうだ。
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