残りは君が脱いでから

 君は頑なだ。落ちてくれない。俺が情熱の全てを注いでも、君は首を縦にふらない。ひとこと、言ってくれればイイのに。「あんたが好きよ」と。

ネットビジネスで成功したが、三日天下で転落した二十代のイサム。再起策もことごとく失敗し、死を覚悟した深夜、小料理屋「ペガサス」の女性店員・マリコに命を救われる。 「出世したらまた来てね」 その言葉を胸に産廃業で這い上がったイサムは、十五歳上の彼女に溺れていく。

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残りは君が脱いでから©︎広ヒロスケ Amazon Kindleストア99円 Kindle Unlimited対応

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 マリコ、君と出会ったのは、奇跡だった。

 好きになった。好きとかそんなに軽い感情じゃないかも。ベッロベロに惚れて、ドッロドロに溶けた。

 俺は君を完全に手に入れたいんだ。

 君は頑なだ。落ちてくれない。俺が情熱の全てを注いでも、君は首を縦にふらない。ひとこと、言ってくれればイイのに。

「あんたが好きよ」と。

 それだけでイイのに。なんで乗り越えられない?。歳の差なんて、関係ない。俺にとっては問題にならない。年下の男が、そんなに気に入らないか?。なんで?なんでなんだよ!?

 はじまりは、厳しい父親への反抗心だったと思う。

 俺は絶対金持ちになってやる。で、見返してやる。学生時代の俺は、そんな思いに凝り固まってた。

 俺がまだ小さな頃、母ちゃんに先立たれて、親父は、男ひとりで育ててくれた。感謝はしてる。してるけど、何ていうのかな。腹が立つんだよ。

 何でもかんでも頭ごなし。こっちの言い分を聞いてくれない。俺の家で暮らす限りは、俺に従え。そういう強権を常に発動していたわけだ。

 家を出る、独立する、俺は俺の道を行く。

 大学に入ってすぐ、俺は儲かる仕事を探した。人間と関わるのは好きじゃない。だって面倒だもん。接客なんて、ホント嫌。SNSに流れてるモンスター客の動画を見てると、つくづく世も末だと思うし。

 だからネットで勝負すると決めていた。

 色々試したが、なかなか目が出なかった。気づいたら大学五年になっていた。一年、留年してしまった。実は、入るのに二浪してる。

 このままじゃダメだ。

 バイトを辞めて本気になった。ちょっとでも収入があると、安心して、心がたるんでしまう。俺はまだ本気出してないだけ。そんな漫画があったな。あれは俺の話だ。

 ひと昔前はブログが流行ってた。

 ブログで記事を書けばグーグル広告で稼げる。簡単そうじゃないか。俺にも出来るんじゃね?

 リサーチして仕組みは理解した。一般ピープルの好きそうな記事を書けば、アクセスが集まる。ページが閲覧されればされるほど広告が表示されたり、クリックされたりして、運営者に金が落ちる。イイね。ユーザーに金を払わせないで済む。要は、自分がメディアになって広告報酬を得るって話だ。

 金がないから無料のブログで始めた。簡単だった。というか、このシンプルな手法が俺に向いていた。

 簡単だから参入障壁は低い。ヌルくやってたら、すぐライバルに追いつかれる。勝つためには、普通のことを、異常にやることだ。質ではなく、量をこなした。誰にでもできることだが、誰にも出来ないくらい数をやった。

 ブログ開設から一ヶ月後、百万アクセスを獲った。

 その頃のアドセンスは初月から金になった。PV単価〇・三円だった。翌月二十三日、二十八万が振り込まれた。通帳にはかのマンモス企業の名が刻まれていた。グーグル(ド。

 行ける。確信した。

 ネタを集めるのは鼻くそをほじくるよりも簡単だった。週刊誌のトップ記事をそのままリライトした。内容を一読し、俺の主観を交えて別記事として吐き出す。誰よりも、どこよりも早く。毎朝三時、コンビニに行った。その日、発売される週刊誌を全部買うためだ。

 男性誌、女性誌、少年誌、主婦向け、老年向け、子ども向け、全てを買った。エンタメ、ゴシップ、健康ネタ、都市伝説、任侠モノ、ライフスタイル、全部扱った。ただのリライトじゃダメだ。ユーザーは面白くなければ最後まで読んでくれない。ブログの滞在時間を増やす。これが収入に直結することを俺は直感した。だからストーリー仕立てに書き換えた。起承転結から三幕構成へ。ハリウッド脚本のノウハウを取り入れた。

 当たった。ページビューは爆発した。

 ひと記事書けば、十万、二十万と金になる。ウッハウハだった。ブログを横展開すると、報酬は三倍に膨れた。横展開とは、同じ記事を違う記事に仕立て直し、別サイトをやれるだけ増殖させることだ。

 執筆が間に合わない。一文字一円で外注化、総勢七人のチームを持った。稼いで稼いで稼ぎまくった。ウホウホだった。ツイていた。ラッキーだった。有頂天になった。

 大学を辞めて、これに専念することにした。

 都心にマンションを借りた。毎月、三百から五百万が入ってくる。恵比寿にでも、松濤にでも借りられる。カネは問題ない。

 他にも手を出した。PPCアフィリ、SNSアフィリ、動画アフィリ。手当たり次第にやったもの、全部がぜんぶハマった。これがアスリートのいう「ゾーン」ってやつなんだろう。


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