アラ還の俺の部屋に若い女の子が来る。有り得ないことだ。有ってはならないことだとも言える。
アラ還で、孤独を抱えた元料理系ユーチューバー「シュガー」と、心に深い傷を負った若い風俗嬢ヒメコ。偶然の出会いは、やがて「客」と「嬢」という境界を静かに越えていく。料理、抱擁、何気ない会話――互いの欠落に触れるたび、ふたりは生き直す力を得ていく。社会の底で擦り切れた魂ふたつが、真正面から向き合おうとうする。
#エモチックロマンス
#アラ還、最後の恋をデリ嬢と
#広ヒロスケ

アラ還、最後の恋をデリ嬢と
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「ねえ、シュガーさん?」
ヒメちゃんが俺に聞く。
「なんでユーチューブ辞めちゃったの?あんなに人気あったのにさ、勿体ないよ?」
可愛い手で俺のムスコを撫でつけながら。彼女の髪からサボンのフレグランスが強烈に香ってる。
「聞きたい?」
「うん、聞きたい」
「俺が動画を上げるとね、直ぐに低評価する奴がいたんだよね、必ず三人がさ」
「へえ…」
「動画を見てもいないのに低評価をつけるんだよ、そいつらは」
「うん…」
「だから辞めた」
「え?そんな理由で?」
「そうだよ」
「残念、でも私はシュガーさんの料理を食べさせてもらえるから、別にイイかな♪」
ヒメコは俺の乳首をいじって遊んでる。若い女性だけが持つ美しく透きとおる爪。可愛い。ヒメコが可愛い、滅茶苦茶に。
アラ還の俺にとって、人生最後の恋だろう。
料理系チューバーとして七万人の登録者があった。顔出しせず、三台のアクションカメラで調理シーンだけを切り出した。五十代後半のオッサンがメシを作っては食べる。それだけの動画だった。
ニックネームは、苗字のスガをもじった、スガーからシュガーへ。左手の甲にS字のアザがある。面白味を出すため、そこに刺青を彫った。SUGARと、小さく。
覚えやすかったのか、すぐに登録者数一万人を超えた。始めた時期が良かったのかも知れない。
愛車のロードスターで道の駅に行き野菜を買う。店員との何気ない会話も記録した。肉は大和にある馴染みの店に頼み、切り分けてもらう。ブッチャーの様子を撮影させてもらえて、良い画が録れた。オープンカー乗り、ゴマ塩白髪親父のコダワリ料理。
最盛期には収入もそこそこあった。たった三つの低評価ボタンに気をくじかれた。誰が低評価をしているのか。時系列から、よくよく観察すると、普段、良いコメントを書いてくれるファンの仕業だと確信した。人間というのは、外側だけではわからない。ユーチューブといえど、浮世には違いない。
そんなに俺が気に入らないんならお望みどおり辞めて差し上げる。ヤケになった。メンタルが弱いとも言える。別にイイさ、どうだって。料理ってのは、ただひとり愛する者のためこしらえるもの。見せびらかすモンじゃない。今ではそう思う。
ヒメちゃんが来る日には美味いものを作って食べさせたい。
仕込みを終えて彼女を待つ。約束の時間から三十分前になったら、調理に取り掛かる。出来立ての熱々を振る舞いたい。俺のところで、彼女をゆっくりと休ませる。そのために彼女に金を払うことは、今や俺の最大の喜びだった。
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